リアルイベント「文学茶話会」の予習をいたしましょう。
『ロック母』角田光代    講談社文庫


新刊『明日、あたらしい歌をうたう』で大きいテーマとなっている母子関係は、角田作品で繰り返し取り上げられてきたものです。
2007年刊行の『ロック母』もそうでした。


妊娠した娘がひとり、実家へ戻ってきます。こちらで出産をしようというのです。
生まれ育った田舎は昔と何ら変わりませんが、母親の様子だけは異なっていました。ロックを大音量で聴くのが日課になっていたのです。ローテーションの中心はニルヴァーナでした。


楽しんでいるようには見えないのに、大音量でロックを流し続ける母。なぜそんなことを?    でも娘には、うっすらとその気持ちがわかります。

「音楽がどこかに自分を連れだしてくれると思っているんでしょう。」

10代のころ、自分も同じように、音楽にすがっていたからです。


娘は出産までのときを、複雑な気持ちを抱えたまま、実家で過ごします。

「十年ぶりに実家に帰ってきたのは、楽をしたかったというよりむしろ、もっと単純にチヤホヤされたかったからだ。」

部屋で仰向けになると、

「黄ばんだレースのカーテンの向こうに青空が広がっている」

のが見えました。


地元での日々は、キズナと呼ぶのかエンとでも言うのか、自分を取り巻く強固な何かを、愛憎渦巻く感情を抱きながら、じっくり眺める時間となるのでした。